第一話

それは、トリニティがAEU領の山岳地帯にある、軍事施設を壊滅させた時だった。

彼等はいつも通り、基地を殲滅させ、ミッションを完遂させた。
ところがその時、スローネアインの放ったランチャーにより、ある「物」が破壊されてしまった。

それは、幻想や空想生物達がいた時代、ある者達がとてつもない何かを作り出してしまい、神の怒りと共に滅びた。
そこでその勢力の長が、その力が二度と悪用されない事を願い、地盤が安定していた場所に、それを封印した。

だが、西暦2307の今日、再びそれが目を覚ましてしまったのだった。

それが、ソレスタビーイングが望んだ世界とは異なる、暗黒の世界への入口となってしまうとも知らず・・・


彼等がミッションを終え、刹那達ガンダムマイスターと一戦を交えた夜。

AEU領 イギリス基地

その日、これまでのソレスタルビーイングの介入行動と、タクラマカン砂漠の合同軍事演習後に出現した
3機のガンダムの検証が行われていた。

大型スクリーンには、これまでの介入活動の詳細と、機体の特徴、攻撃パターンなどが詳しく調べられていた。

無論これは、AEU領だけにかかわらず、全世界と宇宙での行動も含まれていた。
「・・・以上が、これまでに介入した、4機のガンダムの詳細です」
士官が報告を終え、席に着いた。

そして次に、カティ・マネキン大佐が報告を始める。
「そして、このデータが、タクラマカン砂漠での、合同軍事演習後に現れた3機だ」
スクリーンに、それぞれ、スローネアイン、ツヴァイ、ドライがクローズアップされ、兵士が報告を始めた。

「彼等の介入行動は、明らかに異端の物が多く、残虐性が認められます。今までのガンダムは、こちらが撤退すれば、それ以上の追撃はせず、軍基地への直接介入は、行われていません」
この内容に、各国は改めて違いを感じた。

今までのガンダムは、戦争行為のみ攻撃をしていたのだが、トリニティの操る3機は、明らかに自分達から攻撃をしかけ、殲滅戦まで行っている。

そして3時間後

今後の方針としては、彼等に対する警戒を強化するという意見で終結した。

皆が席を立つ頃、空には雷鳴が鳴り響き、大雨を降らせていた。

幸い会議室から兵舎までは渡り廊下がある為、それほど困ることはなく、各国のエースパイロットや司令官達も、事前に用意されていたタクシーで、滞在先のホテルに戻って行った。

兵士達は談話室や自室で、それぞれくつろぐ者や、これまでの報告書を作成している者など、過ごす時間は様々だ。

だが、彼等はこの時、これから起こる恐怖に気付いていなかった。

第二話

レクレーションルーム

ここではAEUの兵士達が、テレビを見たり、読書をしたり、カードゲームなどをしていた。
「・・・よしパトリック。勝負だ!」
「ヘッヘー! AEUのエースをなめるなよ! さあ来い、カール!」
パトリック・コーラサワーの相手をしているのは、カール・ラマス少尉で、彼とは1期違いではあるものの、二人はまるで悪友のように仲が良く、休暇でも共に過ごす事が多い。

カールが、彼の手に持たれたカードを取ろうとすると、そのたびに反応が変わる。

これを見た他の兵士は、必死になって笑いをこらえていた。
これでは、どのカードが当たりか丸わかりなのだ。

そして案の定、パトリックが最後まで残ってしまった。
「クッソ〜! このAEUのスペシャルさまが〜」
「ハハハ。パトリック、完全顔に出てんだよ」
「それじゃ幼稚園児でも負けるぜ〜」
「るっせ〜!」
他の兵士に馬鹿にされ、コーラサワーは真っ赤になって地団太を踏んだ。
「んじゃ、罰ゲーム。俺コーヒー」
「じゃ俺は、ビールとつまみ」
「俺は小腹空いたから、なんか食うもん」
「あ、俺も〜」
次々と来る注文に、パトリックは肩を落とした。

ゲームで負けたら者が、みんなに何かを奢るというルールではあったものの、まさか言いだした自分が負ける事を計算に入れていなかったのだ。
「んじゃ、一旦休憩にしようぜ」
「お〜」
皆はそれぞれ解散し、パトリックはメモを見ながら、財布の中を確認する。
幸い給料日が今日だったので、金銭的な問題はなかった。

しばらくすると、雨音と雷が強くなり、すさまじい轟音とともに、空が黄色に染まった。
「うわ!」
「なんだ?」
「落ちたぞ」
皆が外を見ると、全てが暗闇に包まれた。
「停電か?」
「すごかったからな〜」
「俺、様子見てくる」
「俺も行こう」
「んじゃ俺も」
兵士の数人が、状況を確認すべく、懐中電灯を手に出て行き、司令部に連絡を取る者もいたが、まったく繋がらない。
「だめだ。通じねえ」
「混乱してるからな〜。この分だと、こっちも出なきゃならなくなるんじゃねえか?」
「かもな〜」
数人が話していると、一人があることに気付いた。
「あ、今カールの奴トイレ行ってるんじゃ・・・」
「あー! あいつそう言えば、ガキの頃雷に当たって死にかけたって!」
「俺ちょっと見てくる」
「あ、俺も」
エリア・ライヴェルト少尉とライナ・イルグレア少尉は、カールの幼い頃からの友人で、彼のトラウマを知っているため、とりあえず、様子を見に行く事にした。

2F トイレ
カールは2人の心配していた通り、頭を抱えてうずくまっていた。
「たく・・・なんだってこんな時に・・・」
彼はそっとドアから顔を出した。

案の定そこは暗闇で、天候が悪いため、わずかな光も差し込んでいなかった。
「マジかよ。たく、速く復旧してくれよな〜」
彼は手探りで、なんとか手を洗い、トイレを出ようとした。

ところが奇妙な事に、トイレのドアがまったく動かない。
「あ、あれ? お、おい誰のいたずらだ?」
誰かのいたずらだと思い、ドアをノックしたが、まったく返事が返ってこない。

そして、彼の後ろで、恐ろしい事が起きようとしていた。


つづく